インタビュー

2019.06.07

「不動産投資メディアの記者」と名乗りたくない私が、その肩書に胸を張ろうと思った理由

株式会社ファーストロジックは、不動産投資メディア「楽待新聞」を運営している。

「不動産投資」というと、世間的には怪しいイメージを持っている人も少なくない。もちろんある種正解の部分もあるが、誤解や理解不足によるそうしたイメージは無くしていきたい。そう思った「楽待新聞」編集部の記者の1人が、自らの体験と考えを著した。

「不動産投資メディアの記者」を名乗りたくないワケ

人生で一番初めに「不動産投資」という言葉を知った時、どのような感想を抱いただろうか? 「夢がある」「儲かりそう」「難しそう」…。特に何の感想も抱かず、「そういうものがあるのか」と受け止めた人もいるかもしれない。

不動産投資を詳しく知らない多くの人からは「怪しい」という意見もしばしば出る。楽待新聞編集部の記者である私の周囲でも、同じような反応は多い。

「不動産投資ってなんか怪しい」「勧誘されるんじゃないか」「不動産会社に勤めてるってこと?」私にとっては、自分の仕事を説明した時の、こうした反応が煩わしかった。

だから、私は周囲の人に「不動産投資メディアで記者をしている」と言いたくない。特にそこまで親しくない人や初対面に近い人であればなおさらだ。そもそもどんな仕事をしているか、個人的にはあまり話したくないのだが、その場の雰囲気上話さざるを得ない時には「Webメディアのライターをやっている」と言っている(もっとひどい場合には「IT企業に勤めている」とごまかすこともある)。

私が「楽待新聞の記者で、不動産投資に関して取材をしたり記事を書いたりしている」ことを知っている人は、家族を含めて両手で数えられる程度だろう。

だが、これまで2年間不動産投資の世界を取材してきて、私自身、不動産自体や不動産投資が好きになってきた。もちろん決して良い話だけではないし、失敗した投資家や、悪質な事例に遭遇することもある。

しかし、よく理解をしないままで、「不動産投資は絶対に儲からない」「不動産投資は怪しい」と言われるのも違うと思う。今回は、「楽待新聞」記者の視点から、まだ不動産投資を知らない方々に向けて不動産投資とは何か、何がメリットで、何が危険なのか、私の考えをお伝えしたい。

楽待新聞編集部の辛さと、3つの編集方針

現在社会人8年目の私は、2017年に、「楽待」を運営するファーストロジックに中途入社した。新卒では通信社に記者として入り、丸5年間、事件や政治を日夜取材。諸事情で会社を移ることにはなったが、「記者」と言う仕事の魅力に取りつかれていた私は、転職活動でも「文章を書く仕事」「取材ができる仕事」という条件で探しており、それに適うのがファーストロジック(の記者職)だった。

応募した時点では、全くと言っていいほど不動産投資の知識がなかった。単語すら初耳の状態で、業務内容も「不動産に投資をする業界に関連する何かの業態」のような、あやふやかつ正しくはない認識で人事面接に臨んでいたと白状したい。不動産投資とは何か、ようやく少しだけ理解できたのは、入社2日目だ。

不動産投資とは、ざっくり言えば「マンションやアパートなどを購入して、それを貸し出し、入居者からの家賃を収入とする」こと。賃貸経営、不動産賃貸業などとも呼ばれるが、一言で言えば「大家さんになる」ことでもある。

現在の私の仕事は、基本的にはこうした不動産投資家や、不動産投資にかかわる専門家などに取材をして、不動産投資家に役に立ててもらえる記事を書くことである。個人的には法律を調べることが好きなので、弁護士に判例や法律について聞くことが多い。

正直なところ、仕事はそう楽ではない。前職に比べれば圧倒的に拘束時間は減ったものの、現在の楽待新聞編集部の人員が充足しているとは言い難く、1人で何本もの記事を同時並行で進めなくてはならない。やりたい取材、書きたい文章、撮りたい写真がさまざまな事情で叶わないことも多い。大勢に読んでもらえる、良い記事だったと言ってもらえるコンテンツを提供したいという思いは誰にも負けないつもりだが、毎日のように自分の実力不足を実感し、ストレスもフラストレーションも感じる日々だ。

だが、楽待新聞編集部だからこその良さもある。それは、ここにいる全員が本気で「不動産投資市場を良くしていきたい」と考えていることだ。

楽待新聞は(実はあまり表に出す機会がなかったのだが)3つの編集方針を掲げている。「中立主義」「投資家視点」「独自性の追求」だ。例えば「中立主義」では、「中立的な立場から多面的な取材を行い、いかなるときも偏向がなく、信頼性の高い情報を提供する」と定めている。

これは、例えば(ファーストロジックが収益物件のポータルサイトを運営しているにもかかわらず)不動産投資の危険性を訴えたり、業界の不祥事を報道したり、といったことも含まれるだろう。

これらの編集方針は、編集部が全員でアイディアを出し、議論を重ね、大幅な改定や転換を経て昨年定めたものだ。形骸化した方針ではなく、真剣に不動産投資業界と向き合っていきたいメンバーしかここにはいないのだ、と感じている。

「失敗した」投資家

冒頭にも述べた通り、不動産投資は「怪しい」「失敗しそう」というイメージが常に付きまとう。そして実際に良い話ばかりでもない。

不動産投資を知らない方々でも、最近のニュースを通して、不動産投資にネガティブな印象を持った人もいるだろう。女性用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を購入したものの、収入を得られずに苦悩するオーナー、あるいは建築基準法違反の疑いも持たれる「レオパレス」の物件を今後どうすべきかわからず困惑するオーナーの姿は、多く報道されてきている。

また、主に「新築ワンルームを買わないか」というような投資勧誘の電話が来て、強引に契約させられた、というような話を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。

不動産投資に「失敗した」と考えている投資家は、実在する。

「覆面座談会」でも語ってくれた投資家のAさんは、都内にある新築のワンルームを買った。家賃収入から返済などの支出を引くと毎月4万円のマイナスで、2年所有した段階で100万円の赤字だ。売却しようにも400万円ほどを支払わなくてはならず、身動きがとれないと話していた。

1年ほど前に取材させていただいたサラリーマン投資家のBさんは、マンションとアパートを1棟ずつ所有している投資家だった。約2億円を金融機関から借り入れており、家賃収入として毎月数十万円入ってくるものの、その6~7割がローンの返済に消える。この先さらに空室ができたり、修繕が必要になったりしたとき、そのための資金がままならない状態だった。家族にはその状況を伝えられず、「日常を送っていても、急に不安や恐怖に襲われる」とつぶやく姿が忘れられない。

数千万、数億という借金を抱え、物件を手放すこともできないオーナーもいるのだ。

「不動産投資は不労所得」の誤解

ただ物件を所有しているだけで、毎月家賃が入ってくる―。「大家業」に対して、「不労所得があっていいね」と半ば妬みまじりの言葉を聞くこともある。

だが、不動産投資は、決して不労所得ではない。

不動産投資は、「投資」と呼ばれるが、実際には「事業」だ。不動産投資家は物件のオーナーであり、事業の経営者である。だからこそ、自らが行動したり、努力したり、勉強したりしなくてはならない。

「自分は失敗した」と考えている投資家の事例から私が思うのは、「主体性を持って行動しなかった」ことが失敗の原因でないか、ということだ。

以前取材をさせていただいた男性投資家は、「大家の仕事は通帳を眺めているだけだよ」と笑っていた。だが、話を聞いてみると、その「通帳を眺めているだけ」の今を迎えるまでに、何十社という不動産会社をまわり、買いたい物件の収益性をとことん計算しつくし、物件管理を委託する管理会社や入居者との関係性を良い状態で維持するために常に気を配り…と、努力と行動を重ねていた。

また、管理会社への委託をせず、7棟50室の物件をすべて自分で管理している専業投資家は、サラリーマン時代でも仕事帰りに物件に行き、電球交換をしたり、土日を除草作業に費やしたりしていた。金融機関からの融資を受けず、自己資金のみで物件を買い進め、現在の家賃年収は1500万円。それだけ聞くと羨ましい、と思ってしまうが、「事業者として、安全な部屋を必ず提供する意識を持っていなければいけない。私にはその責任がある」とも語っている。

この方々だけではない。不動産投資で成功を収めている投資家は、自ら十分すぎるほどに知識をつけている。とことんまで計算し、妥協せず、行動し続けている。誰かの言いなりになったり、丸投げしたり、責任を放棄したりしていない。物件や、賃貸業に対する愛がある。

それは、世間が思うほど決して楽な仕事ではない、と心から感じている。

私自身は、愛を持って事業に取り組む不動産投資家に話を聞くのが好きだ。そして、不動産投資そのものが好きだ。自分でもやってみたいと感じているし、できれば物件を買いたいと思っている。将来は自分のスナックを開くのが個人的な夢なのだが、それなら商業ビルを購入して、そこで自分の店を構えればいいのでは? とも最近は考えている。

だが、すべての人に不動産投資を勧めるかと言われると、決して勧めはしない。なぜなら、安易な考えや勢いだけで不動産投資を始めてしまい、辛い思いをしている人を知っているからだ。

「不動産投資ってなんか怪しい」―。その認識は、正解ではないと思う。試行錯誤して、辛い経験をしながらも楽しみながら事業として手掛けつつ、多くの収入を得ている投資家も大勢いる。

一方で、何度も述べた通り、「誰かに勧められたからやってみる」「誰かが代行してくれるからやってみる」と人や書籍、インターネットをうのみにして、努力を怠ってしまえば、不動産投資はうまくいかない。

「楽待新聞」を、不動産投資を正しく認識してもらうきっかけになるようにしていきたいと思う。そして、これまで大勢に隠し通してきた「私の仕事」を、胸を張って話せるようにしていきたい。

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